賃金のデジタル払いとは?中小企業が導入を検討する際に確認すべきポイント
2023年の制度解禁以降、給与をスマートフォンの電子マネー口座へ直接支払う「賃金のデジタル払い」を導入する企業が少しずつ増えています。外国人労働者やアルバイト・パート層を中心に希望の声が上がる一方、「何から確認すればよいかわからない」という採用・労務担当者の声も少なくありません。この記事では、賃金のデジタル払いの基本的な仕組みと、導入を検討する際に確認すべきポイントを整理します。
賃金のデジタル払いとは
賃金のデジタル払いとは、銀行口座を経由せず、厚生労働大臣が指定する資金移動業者(○○ペイなどのスマホ決済サービス)の口座へ給与を直接振り込む支払い方法です。労働基準法では賃金は通貨で直接支払うことが原則とされていますが、例外的な支払い方法として銀行振込とともにデジタル払いが認められています。
導入のメリットとして挙げられる点
- 銀行口座を持たない(持ちにくい)外国人労働者への支払いがしやすくなる
- スマホ決済での即時利用がしやすく、受け取った給与をそのままキャッシュレス決済に使える
- 振込手数料の見直しにつながる場合がある
導入前に確認すべきポイント
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 労使協定の締結 | デジタル払いを導入するには、事業場で労使協定を締結する必要がある |
| 対象となる資金移動業者か | 厚生労働大臣の指定を受けた業者に限られる。指定業者は随時更新されるため最新情報の確認が必要 |
| 従業員の個別同意 | 労使協定を結んでも、従業員一人ひとりの個別同意がなければ強制できない |
| 口座の受取上限額 | 資金移動業者の口座には受取上限額が設定されており、上限を超える分は別口座への自動振替などの対応が必要 |
| 破綻時の保証 | 資金移動業者が破綻した場合の保証の仕組みを従業員に説明できるようにしておく |
全額をデジタル払いにする必要はない
デジタル払いは、給与の全額をその方法で支払うことを義務づけるものではありません。従業員の希望に応じて、銀行振込とデジタル払いを併用したり、一部の金額だけをデジタル払い口座へ振り分けたりする運用も可能です。「希望者だけ選べる」制度として設計することで、既存の給与計算フローへの影響を抑えながら導入しやすくなります。
導入を進める際の実務フロー
- 給与計算システムがデジタル払いに対応しているかを確認する
- 利用する資金移動業者を選定し、厚生労働大臣指定業者であることを確認する
- 従業員代表との間で労使協定を締結する
- 希望する従業員から個別の同意書を取得する
- 給与明細・社内規程にデジタル払いの取り扱いを明記する
採用活動における伝え方
求人票や面接の場で「デジタル払いに対応している」ことを伝える場合は、あくまで選べる支払い手段のひとつであることを明確にし、従来の銀行振込も引き続き選択できる旨をあわせて案内すると、応募者に誤解を与えずに済みます。特に外国人材の採用を検討している企業にとっては、口座開設のハードルを下げられる手段として、採用の間口を広げる一因になり得ます。
まとめ
賃金のデジタル払いは、労使協定の締結と従業員個別の同意を前提に、銀行振込と併用できる給与支払いの選択肢です。対応する資金移動業者の確認や受取上限額への対応など、導入前に確認すべき実務ポイントを押さえたうえで、自社の従業員構成に合った支払い方法を検討することが大切です。